■偽痛風とは?
「痛風に似た突然の関節痛」―でも原因は尿酸ではなくカルシウムの結晶
偽痛風とは、関節内に「ピロリン酸カルシウム結晶」が沈着して炎症を起こす病気で、医学的には「CPPD(カルシウムピロリン酸沈着症)」と呼ばれます。
急に膝などの関節が腫れて熱を持ち、強い痛みが出るため、「痛風」とよく似た症状を呈しますが、原因物質が異なります。
特に高齢者に多く、膝関節に起こるケースが多いのが特徴です。
■原因
関節内にカルシウム結晶がたまり、炎症を引き起こす
- 加齢により関節軟骨が変性すると、ピロリン酸カルシウムが関節内に析出
- それが関節に沈着し、免疫反応で炎症が起きる
- 主な誘因:
- 加齢(特に60歳以上)
- 変形性関節症の既往
- 脱水や急な体調変化
- 副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症などの代謝性疾患
- 痛風とは違い、尿酸値は正常のままであることが多い
■初期症状
ある日突然、膝関節がパンパンに腫れて痛む
- 最も多いのは膝関節の発赤・腫脹・激しい痛み
- 足首・手首・肘・肩などにも起こることがある
- 痛みは数日~1週間ほどで治まるが、繰り返し発作が起こることもある
- 発熱・倦怠感を伴うこともあり、細菌性関節炎との鑑別も必要
- 多くは片側の関節に急性症状が出る(単関節炎)
初発時は痛風との区別が難しいため、関節液の検査で確定診断が行われます。
■重篤な症状・進行するとどうなる?
慢性化・関節の変形を起こすこともある
- 発作を繰り返すと、関節内の軟骨や組織が破壊される
- 慢性偽痛風(CPPD関節症)になると、変形性関節症と似た関節変形を起こす
- 特に膝や手首では、腫れや痛みが持続してQOL(生活の質)を低下させる
- 骨に石灰沈着が認められることもあり、X線で診断されやすくなる
- 稀に全身性の炎症反応や発熱、転倒リスクを伴う高齢者のADL低下要因になる
■まとめ・予防と対策のポイント
- 痛風との違いは「尿酸値が正常」「結晶の種類が異なる」点
- 関節液検査でピロリン酸カルシウム結晶の確認が診断の決め手
- 急性発作時は、NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)やステロイド投与で症状を抑える
- 慢性例では、関節リハビリや運動療法、体重管理が有効
- 根本治療薬は現在なく、再発予防と炎症抑制が中心
- 脱水予防、体調管理、代謝疾患の治療が再発防止に役立つ