頚椎椎間板変性症とは?
~首の「クッション」がすり減ることで起こる痛みとしびれ~
■ 概要
**頚椎椎間板変性症(けいついついかんばんへんせいしょう)**とは、首の骨(頚椎)の間にある「椎間板」が加齢や負荷によって変性(劣化・すり減り)し、痛みやしびれを引き起こす疾患です。
椎間板は、背骨の骨同士の間にある軟骨のクッションのような役割を持ち、首の柔軟な動きや衝撃吸収に大切な構造です。しかし、年齢とともに水分が減り、弾力性を失って硬くなることで、周囲の神経や組織に負担をかける原因となります。
40代以降から多く見られ、首の痛みや肩こり、腕のしびれ、動かしづらさなどの症状として現れます。
デスクワーク、スマートフォンの長時間使用、スポーツや重労働などで首に負担をかけ続けている方にも発症しやすくなっています。
■ 原因
頚椎椎間板変性症の主な原因は、「椎間板の老化・劣化」によるものですが、以下のような生活習慣や環境が影響します:
- 加齢による椎間板の水分減少・弾力低下
- 長時間の同じ姿勢(デスクワーク・スマホ使用)
- 猫背やストレートネックなどの姿勢不良
- 首に強い負荷をかけるスポーツ・作業
- 外傷や頚椎の過去の損傷歴
椎間板が変性すると、周囲の神経や椎間関節に圧迫や炎症を引き起こし、首だけでなく肩・腕・手指へと放散する痛みやしびれが現れることがあります。
また、進行すると椎間板が突出し「頚椎椎間板ヘルニア」や「頚椎症」へとつながることもあります。
■ 主な症状
頚椎椎間板変性症では、首の動きや神経に関わる様々な症状が出現します。代表的な症状は以下の通りです:
- 首の痛み(特に後ろや横を向いた時)
- 慢性的な肩こり・首こり
- 肩から腕・手にかけてのしびれ・だるさ
- 手先の動きが鈍くなる(箸が持ちにくい、ボタンが留めにくいなど)
- 首を動かした際の違和感や引っかかり感
- 頭痛(後頭部に重だるい痛み)
- 軽度のめまいや耳鳴りを感じることも
これらの症状は、椎間板の変性が進行することで神経根や脊髄が圧迫されているサインである可能性があります。
■ 重篤な症状と注意すべきサイン
以下のような症状がある場合は、単なる変性症にとどまらず、脊髄が圧迫される「頚髄症」などの重篤な状態に進行している可能性があります。
- 両手や両足のしびれ
- 箸が持てない・字が書きづらいなどの巧緻運動障害
- 歩行時にふらつく・階段でつまずく
- 排尿・排便のコントロールが難しくなる
- 首の痛みとともに発熱、強い倦怠感
このような症状がある場合は、早急にMRI検査などによる精密な診断と治療が必要です。
放置すると、神経のダメージが回復困難になる恐れもあるため、早期受診をおすすめします。
■ 当院での治療方針
当院では、頚椎椎間板変性症に対し、根本原因の診断と個別に合わせた保存的治療(手術を行わない治療)を中心に対応いたします。
● 診断方法
- 詳細な問診と触診
- 頚椎のX線(レントゲン)撮影による椎間板のすり減り評価
- 必要に応じてMRI検査を紹介し、神経圧迫の有無を確認
● 保存的治療
- 薬物療法
┗ 鎮痛薬(NSAIDs)、筋弛緩薬、神経障害性疼痛治療薬など - 物理療法
┗ 温熱療法、低周波電気刺激などで筋緊張の緩和 - 生活指導・枕の調整
┗ 頚椎の自然なカーブを支える寝具の提案
状態により、神経ブロック注射や脊椎専門医との連携による手術治療のご案内も行います。
■ 日常生活で気をつけるポイント
椎間板の変性は完全に元には戻りませんが、進行を予防し、症状を軽減させることは可能です。以下のような生活の見直しが効果的です:
- 首を前に突き出す姿勢を避け、モニターは目の高さに
- 枕は低すぎず高すぎず、頚椎を自然に支える高さを選ぶ
- 長時間の同じ姿勢を避け、1時間ごとに軽く首や肩を回す
- 適度な運動やストレッチを継続する(肩甲骨・胸椎も意識)
- 荷物は片側で持たず、両肩または前後のバランスを保つ
■ このような方はご相談ください
- 首や肩の痛みが続いていて改善しない
- 腕や手がしびれて物が持ちにくい
- 病院で「加齢ですね」と言われたが、不安が残る
- 整体・マッサージでもよくならない
- パソコン作業やスマホ使用時間が長く、姿勢が気になる
当院では、一時的な痛みの緩和ではなく、根本的な原因と再発予防を重視した治療を行っております。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
■ まとめ
頚椎椎間板変性症は、年齢や生活習慣によって誰にでも起こりうる疾患ですが、早期の対策によって日常生活の質を大きく向上させることができます。
当院では、患者様それぞれの生活環境・姿勢・症状に合わせた丁寧な診療を大切にしています。
「年のせいだから」とあきらめず、まずはお気軽にご相談ください。