前十字靭帯損傷とは?
前十字靭帯損傷とは、膝関節内にある「前十字靭帯(ACL)」が、主にスポーツや事故などによって部分的または完全に断裂するケガのことです。
前十字靭帯は、大腿骨(ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぎ、膝の前後方向の安定性を保つ重要な靭帯です。この靭帯が損傷すると、膝がガクッと崩れる「膝くずれ」や不安定感が生じ、日常生活や運動に支障をきたします。
特に、ジャンプの着地や急な方向転換などの場面で損傷しやすく、スポーツ選手や若年層に多く見られる外傷のひとつです。
原因
前十字靭帯の損傷は、次のような動作や状況で発生します。
スポーツによる非接触型損傷(最も多い)
- 急停止(ストップ動作)や急な方向転換
- 着地時のバランスの崩れ
- 自分の動きによって膝が内側に入りながらねじれる動作
特に、バスケットボール、サッカー、バレーボール、スキーなど、激しい動きや方向転換の多いスポーツで多発します。
接触型損傷
- 他の選手や物との衝突によって、膝が不自然な方向に押される
交通事故・転倒
- 車の衝突や自転車の転倒などで膝に強い衝撃を受ける
女性に多い要因
- 骨盤の角度や筋力差などにより、女性は男性に比べて発症率が2〜8倍高いと言われています。
初期症状
前十字靭帯損傷の直後から以下のような症状が現れます。
- 膝関節内で「ブチッ」「パキッ」という音や感覚
靭帯が切れた瞬間に、明確な断裂感が生じることがあります。 - 膝がガクッと崩れる(膝くずれ)
損傷直後、膝に体重をかけると支えられず崩れる感覚があります。 - 強い痛みと腫れ(関節内出血)
数時間以内に膝が大きく腫れ、膝の可動域が制限されます。 - 歩行困難
痛みと不安定感により、特に最初の数日は歩行に支障が出ます。 - その後も続く不安定感
怪我の直後に痛みが軽減しても、**膝がぐらつくような感覚(不安定性)**が長く残るのが特徴です。
重篤な症状(進行または放置した場合)
前十字靭帯損傷をそのままにしておくと、次のような深刻な問題が起こる可能性があります。
- 膝の慢性的な不安定感
靭帯が断裂したままだと、膝の安定性が失われ、階段や坂道、スポーツ時に「膝が抜ける」感じが続きます。 - 半月板損傷の併発
靭帯が機能しない状態で膝を使い続けると、半月板に繰り返しダメージが加わり、損傷しやすくなります。 - 変形性膝関節症の進行
長期間放置すると、膝の軟骨がすり減り、変形性膝関節症へと進行してしまうことがあります。 - スポーツ活動の継続が困難に
安定性を欠いた状態では、激しい運動は再損傷のリスクが高く、競技復帰が難しくなります。