脊柱管狭窄症とは?
~歩くと足がしびれる、休むと楽になる… その症状、脊柱管狭窄症かもしれません~
■ 概要
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、背骨の中を通る神経の通り道「脊柱管」が、加齢や椎間板の変性、骨の変形などによって狭くなり、神経を圧迫することで痛みやしびれ、運動障害を引き起こす疾患です。
特に腰椎(腰)で起きる「腰部脊柱管狭窄症」が多く、50代以降の中高年の方に多く見られます。歩行時に足がしびれて辛くなり、しばらく休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が代表的な症状です。
脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫され、下肢のしびれや痛み・脱力感などの神経症状が現れるため、放置すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
■ 原因
脊柱管狭窄症の主な原因は、加齢に伴う脊椎の構造変化です。長年にわたり背骨に負担がかかることで、以下のような変化が起こり、脊柱管が狭くなります:
- 椎間板の変性(潰れ・膨隆)
- 椎間関節の変形や骨棘(こつきょく)の形成
- 黄色靭帯の肥厚(きいろじんたいが厚くなる)
- 脊椎の不安定化(すべり症など)
加齢以外にも、以下のような要因が発症を早めたり、症状を悪化させることがあります:
- 長時間の座り仕事や重労働
- 過去の腰椎手術歴や外傷
- 姿勢不良・猫背
- 遺伝的な骨格傾向
多くの場合、複数の変性が重なって発症しており、「腰椎椎間板ヘルニア」などとの鑑別も重要になります。
■ 主な症状
脊柱管狭窄症に特徴的な症状は、以下のような神経性の下肢症状です。
- 間欠性跛行(かんけつせいはこう):歩いていると足が痛く・しびれてきて、休むとまた歩けるようになる。
- 足のしびれ・脱力感:片足または両足にしびれや力の入りにくさを感じる。
- 腰から臀部(お尻)への放散痛:長時間の立位や歩行で症状が強くなる。
- 前かがみ姿勢で楽になる:買い物カートを押すような姿勢では症状が緩和されやすい。
- 足先の冷え・感覚の鈍さ:血流障害とは異なる“神経性の冷え”が出ることもあります。
初期は軽度な腰痛やしびれのみですが、進行すると歩行困難や日常生活動作の制限が生じ、生活の質が大きく低下します。
■ 重篤な症状と注意すべきサイン
脊柱管狭窄症が重症化すると、以下のような神経障害・脊髄障害を引き起こすことがあります。
- 足にまったく力が入らない、つまずく、階段がのぼれない
- 尿意・便意のコントロールができない(膀胱直腸障害)
- 安静時にも痛みやしびれが続く(夜間痛)
- 急激な下肢の感覚障害
これらは「馬尾症候群」「高度な神経根障害」など、緊急性の高い病態であり、早期にMRI検査と専門医による評価・治療が必要です。手術が必要となるケースもあります。
■ 脊柱管狭窄症に対するアプローチ
脊柱管狭窄症の治療には、症状の程度や生活状況に応じた段階的な治療計画が必要です。当院では以下のような治療法を組み合わせて、患者様一人ひとりに合わせたアプローチを行っています。
保存的治療(手術をしない治療):
- 薬物療法:消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛薬、筋弛緩剤など
- 神経ブロック注射:痛みの強い部位への局所注射
- 物理療法:温熱療法、電気刺激療法、牽引療法 など
手術療法(当院では行えないため専門の病院へ紹介になります)
- 除圧術(じょあつじゅつ):神経の通り道を広げる手術
- 固定術(きていじゅつ):不安定な脊椎を支える手術
※当院では手術が必要と判断された場合、信頼できる連携医療機関をご紹介いたします。
■ 「歩くのがつらい」は歳のせいではありません
「最近、足がしびれる」「立っていると痛くなる」「休むと楽になるけれど、またすぐつらくなる」…
それは単なる老化現象ではなく、脊柱管狭窄症のサインかもしれません。
当院では、丁寧な問診と身体診察、画像診断(MRI・レントゲン)により、的確な診断と治療を行っています。症状の進行を防ぎ、元気に歩ける日常を取り戻すためのお手伝いをいたします。