擦過傷の要点
擦過傷(すり傷)とは、転倒などで皮膚が地面やアスファルトなどにこすれることで、皮膚表面(表皮〜真皮の浅い部分)が傷つく外傷です。傷口が広く浅いことが多く、砂や砂利などの異物が入り込みやすいのが特徴です。従来は「消毒してガーゼで乾かす」処置が一般的でしたが、近年は消毒をせず傷を乾かさない「湿潤療法」のほうが、痛みが少なく治りも早いとされ、当院でもこの方法を中心に治療を行っています。
擦過傷の原因
転倒・転落によるもの
歩行中や自転車・バイクの走行中の転倒、階段からの転落などで、地面と皮膚がこすれることで生じます。
スポーツによるもの
球技や陸上競技など、地面に接触する機会が多いスポーツ中のけがとして起こりやすい傷です。
子どもに多い理由
運動能力の発達途中にある子どもは転倒しやすく、公園や運動場での擦過傷は非常によくあるけがのひとつです。
擦過傷の症状
傷の見た目・状態
表面が赤くただれたようになり、じくじくとした滲出液(しんしゅつえき)が出ることがあります。範囲が広い場合は特に痛みを強く感じやすい傷です。
異物の混入に注意
砂、砂利、アスファルトの破片などが傷の中に入り込んでいることがあり、そのまま放置すると「外傷性刺青(がいしょうせいしせい)」と呼ばれる、皮膚の中に異物が残ったまま治ってしまう状態になることがあります。
応急処置(自宅でのケア)
まずは流水でしっかり洗い流す
砂やほこりなどの異物を、水道水などの流水で十分に洗い流します。目に見える汚れが多い場合は、石けんを使って優しく洗うことも有効です。
消毒液は基本的に使わない
アルコールやヨード系の消毒液は、雑菌だけでなく傷の治癒に必要な正常な細胞まで傷つけてしまうことがあり、湿潤療法の考え方では基本的に日常的な消毒は行いません。
傷を乾かさない
乾いたガーゼでおおって乾燥させると、傷の表面にかさぶたができて治りが遅くなったり、痛みが強くなったりすることがあります。傷の湿った環境を保つ被覆材(ドレッシング材)でカバーするほうが、痛みが少なく治癒も早い傾向があります。
受診の目安
自分で異物を取りきれない場合
砂利などが深く入り込んでいて自分では取れない場合は、無理に触らず受診してください。
傷が広い・深い場合
範囲が広い、皮下脂肪が見えるほど深いなど、程度が大きい場合は医療機関での処置が必要です。
感染のサイン(赤み拡大・膿・発熱)がある場合
傷の周囲の赤みが広がる、膿が出る、熱を持つ、発熱があるなどの場合は感染を疑い、早めの受診が必要です。
破傷風の予防接種歴が不明な場合
土や砂で汚染された傷は破傷風のリスクがあり、過去の予防接種歴がはっきりしない場合は医師にご相談ください。
当院での治療の流れ
傷の観察・異物の除去
傷の深さや汚染の程度を確認し、砂や砂利などの異物が残っていれば、洗浄・処置により丁寧に取り除きます。
湿潤療法による治療
異物除去後は、傷の状態に適した湿潤環境を保つ被覆材を選択し、滲出液を活かしながら治癒を促す湿潤療法で経過を見ていきます。従来の「消毒してガーゼを当てる」方法に比べ、痛みが少なく、傷跡が残りにくいとされています。
破傷風トキソイドなど必要な処置
汚染された傷で予防接種歴が不明な場合など、必要に応じて破傷風トキソイドの接種についてもご案内します。
通院での経過観察・被覆材の交換
傷の状態に応じて、被覆材の交換や経過観察のための通院をご案内します。
治った後のケア(傷跡を残さないために)
保湿と紫外線対策
新しくできた皮膚は紫外線の影響を受けやすく、色素沈着(シミのように残ること)を起こしやすいため、保湿とともに日焼け対策を行うことをおすすめします。
経過を見ながらのフォロー
治癒後も色や質感の変化が気になる場合は、遠慮なく診察でご相談ください。
擦過傷は、当院の創傷外来(湿潤療法)で扱う代表的なけがのひとつです。切り傷などのキズについては姉妹ページ「キズ」を、やけどについては「熱傷」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 消毒したほうがいいのではないですか?
すり傷に限らず、日常的な消毒は傷の治癒を助ける正常な細胞にもダメージを与えてしまうことがあるため、当院では基本的に消毒をせず、洗浄と湿潤環境の維持を中心とした治療を行っています。
Q. 市販の傷パワーパッドのような被覆材を使ってもいいですか?
異物がしっかり取り除かれ、感染の兆候がない浅い傷であれば、湿潤タイプの被覆材はセルフケアとして有効な選択肢です。ただし異物が残っていたり範囲が広い場合は、自己判断せず受診してください。
Q. どのくらいで治りますか?
傷の深さや範囲によって異なりますが、表面的な擦過傷であれば1〜2週間程度で上皮化することが多いです。個人差がありますので、経過は診察でご確認ください。
Q. 傷跡は残りますか?
湿潤療法は従来の方法に比べて傷跡が残りにくいとされていますが、傷の深さや範囲、体質によって差があります。心配な場合は治療中・治癒後も遠慮なくご相談ください。
まとめ・受診のご案内
擦過傷は身近なけがですが、異物の取り残しや自己流の処置により治りが悪くなることがあります。範囲が広い場合や異物が気になる場合は、当院の創傷外来(湿潤療法)にご相談ください。